高性能林業機械での造材状況
以上の内容を「林建協働」を進めるに当たっての課題として考えスタートしましたが、その際、この林業への新規参入への期待と課題について、地元建設業40社を対象にアンケート調査を行っていますので、その内容を参考までに紹介します。
この五つの事項から生まれたドイツ林業の理念を心に刻み、日本の林業を担う人材の育成が大切であると感じるとともに、卓越したオペレーターによる高性能林業機械操作など実践的な研修成果を今後の林建協働の取組みに活かしていきたいと考えています。
●組織の目的を決める
最初に、林建協働の組織を立ちあげる際の課題としては、まず自分達の組織は何をやるのかを再度確認する必要があると思います。それは路網のみなのか、間伐等、集約化を含めた全ての森林整備なのか、又は新しい分野でのバイオマス関連事業なのか等々を決めなければなりません。
●森林組合等との調整が必要
次に、地域における既存の森林組合、林業事業体との事業区域の棲み分けや連携体制・内容についての調整とともに、新組織設立の経営方針・計画樹立とそれに伴う調整を確実に行うことが必要です。
特に、業として行う前提となるものは第一に事業地の確保となりますが、これについては制度上の問題も多いことから、まず市有林等のフィールド提供等ついて情報を密にし、これを核に連携して進める必要があります。なお、森林組合との関わりにおいては、行政サイドの支援・指導のあり方が重要になると思います。
さらに、協同組織を立ちあげる際には全てまかせられる人材(専務理事クラス)の確保が鍵となり、林建協働を進める中での調整役を決めなければうまく進まないと思います。
●効率的で安全な作業システムを作ること
また、林建協働を進める上での技術的な課題は、効率的かつ安全な作業システムの構築ができるか否かにかかっています。まず、採算性、生産性を考えた造材技術はプロセッサ、ハーベスタなのかチェーンソーなのか判断出来なければいけません。また、作業路網の作設についても、排水計画や屋根型構造等の技術、暗渠排水の考え方、水の分散を考え、崩れない道づくりや切土高さを考えた施工、さらには環境対策(生態系)を考慮した土壌保護を考えて施工する事が大切となります。
●技術者・技能者の養成が不可欠
さらに、安定的な素材生産のシステム構築のためには、集材を考えた作業路網の選定が重要であり、その為の森林技術者や技能者の養成、フォレスターのような人材、優れたオペレーター、チェンソーマンの養成も不可欠であり、これらの継続的なスキルアップも必要となります。
私たちの林建協働の取組が岐阜県の「地方の元気再生事業」で採択され,2年間にわたる研修を積み重ねて平成22年1月28日に「たかやま林業・建設業協同組合」が立ち上がりました。林業とは非常に奥が深いものであり、まだまだ技術も知識もおぼつかない状況にあります。しかし,地域のインフラ整備と同様に,地域の森林を整備することは地域の安心・安全を守るためでもあり,目指すところは建設業と同じであると感じているところです。
また、公共事業が減るから急に林業へ転業すると言う安易な考えには無理があります。
中長期的な時間を掛けて建設業だからできるコスト管理、そしてすべてを補助金に頼らないように効率的で、採算性・生産性の高い林業に転換する事を目標に取り組みつつ、複業化で雇用を維持することが必要です。地域で努力する建設業が地域社会を盛り上げ、地域の安心、安全のために必要な公共事業を担わなければならないと考えています。
ドイツのアルフレート・メーラーが唱えた恒続林思想を象徴するのが、「最も美しい森林は、また最も収穫多き森林」という言葉です。この言葉から連想されるのは、企業にとっても「健全なる企業組織体の恒続」つまり、いつまでも「生き生きとして強健」で、選ばれ続ける企業になることが究極の目標であり、森林と同様、美しい企業はまた収益多き企業となるのではないかと感じています。
林業の復活がもたらす森の恵みは計り知れません。我々が伐採し利用している立木は先人達の血と汗の結晶であり、我々も後世に良い山を残さなければなりません。たとえ今が大変厳しい時代であっても、山林を巡るあらゆる問題に取り組み、山林が資産として残せるような山づくりをするためにも、山に感謝し、壊れない道を作り、山を守ることを使命として取り組んでいきたいと考えています。
※事務局注釈 : 今回特集の「林研協働」については、全国林業改良普及協会刊行の月刊誌「現代林業」に
平成23年12月号から平成24年4月号まで5カ月連続連載中です。詳細について関心のある方はご覧下さい。
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